しかし、
「お客様、お気持ちはお察しいたしますが、
只今、大勢のお客様に納車をお待ちいただいております。
お待たせして申し訳ございませんが、納車を早めることはできません。」
とのつれない返事だった。
車が使えないのは都合が悪い。困った。
A君再度、担当者に相談した。
バッテリーが老朽化して車が動かせない状態になったこと。
バッテリーがなかなか見つからないこと。
相談というより、お願いであり、直訴、最後は
ゴリ押しまでしてしまった。
担当者の返事は変わらなかったが、嬉しいことを言ってくれた。
「心当たりの中古車会社数社に聞いてみます。
なんとか、バッテリーを調達できるようご協力いたします。お任せください」
気概を感じた。
モノだけを売るのではなく、こころを尽くしてくれる。その姿勢が嬉しかった。
捨てる神あれば、拾う神あり。
数日後、担当者からバッテリーが見つかったという知らせが入った。
A君はめでたく車検まで車を使えることになった
担当者の対応にいたく感激した。
納車を前にPへの愛着は十分に深まり、同時にT社に対する信頼が一層高まり、
一家でファンになったという。
「待ち遠しい」
結局、同乗した3人はゴルフ場に着くまでの車中で
A君のT社とPへの熱き想いを延々と聞かされることになったのだが、
聞き飽きることはなかった。
皆一様にT社、担当者の対応にいたく感激した。
それぞれの頭の中に、T社に対する良いイメージが出来上がったことだろう。
この話を忘れていたとしても、CMを見て思い出すだろうし、
休みの日に販売店を通りかかって、ふと思い浮かぶエピソードとなるかもしれない。
リアル・ストーリーにはそれくらいの力がある。
私もこうして不特定対数の人に知らせたいと文章にするし、
他の2人も方々で話すことだろう。
さらに、聞いた人がさらにそれを人に話せば、一体どれだけの人に広まるだろう。
たかが口コミ、されど口コミ。
人のフィルターを通した情報の恐ろしさは、昨今、方々にはびこる
匿名・勝手メディアが立証してくれてはいるし、感じることではあるが、
良いものを広める。素晴らしい人について知らしめる。
良い評判を撒くためなら、自らいくらでも勝手メディアでありたいと思う。
評判はこうして作られ、揺るぎないものになっていくのだから。
人気商品を生むのも素晴らしい対応をする人材を育てるのも企業である。
T社には件の担当者のような、
人間力の高いセールスパーソンが育つ素地もあるのだろう。
人はつまり、財産。人財である。
人財には"強い個"があり、
心を尽くした営業でお客様とつながり、最高のサービスを生み出す力がある。
優れた開発力、高い生産力、セールスプロモーション、日本独自の接遇や応対。
弱体化したかのように、世界から軽視されているかのように言われるが、
この国が誇るものはまだまだ沢山ある。今こそ、"らしさ"を掘り起こし、認識し、
自らメディアとなって、胸を張って、競争力の高い本物を誇りたい。
A君のT社愛を聞いて、その想いを新たにした。
自信と誇りが生み出すものは、計り知れない。








