話'術'不要の「伝わるトーク」 |「Change&Challenge」~変革と挑戦~ 読んでエナジーチャージBeat Cafe
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『話"術"不要の「伝わるトーク」』

自分の話す内容がなかなか伝わらない。

そう思っている人は少なくないでしょう。

その証拠に「相手に理解してもらう」ための書籍や研修が、世の中にはたくさんあります。

こういった書籍や研修の多くは、相手を"説得しYesと言わせる"テクニックを学ぶことに主眼がおかれた内容になっています。

確かに、人と話をする上で、特に交渉事においては、聞き手に「Yes」と言わせるテクニックは重要なものかもしれません。

ただ、テクニックの活用のみで相手を説得して「Yes」と言わせた場合、ときとして聞き手には何かしら腑に落ちない気分が残ってしまうこともあります。

「なんとなく押し切られた」と、不快に感じてしまうことさえあり、契約事に於いてはラブルに繋がりかねません。

"説得"は、話し手の都合だけを優先した、一方的な話し方と言えます。みなさんも「説得されて不快感が残った」経験が、一度や二度はあるのではないでしょうか。

一方、話が特別に巧くはないのに、妙に惹きつけられる話し方をする人がいます。

先日、ある上場企業の会長の講演を拝聴する機会がありました。話の冒頭に、ご自身が「私は口下手で話が下手」とおっしゃっていた通り、その会長は確かに口下手でしたが、話には非常に惹きつけられる何かがありました。

のめりこむようにメモを取りながら聞いていた私には、講演時間の3時間があっという間に感じられました。

また、東日本大震災の後に注目を浴び、インターネット上にも講演やインタビューの音声、動画が幾つか掲載されている、とある大学の先生もなど、話術に長けているわけではないのに分かりやすく、興味をひかれる話をされる方と感じます。

では、話術が巧みなわけでも、心理的な誘導技術を駆使しているわけでもない彼らの話が、わかりやすく、心を動かされるのはなぜなのでしょう。

前述の会長に伺うと、意外にも当たり前のことをおっしゃいました。

「話を事前にまとめ、原稿を作り、何度も練習をしている」のだそうです。「話術に長けている方、話の引き出しが多い方ならば、当日の聴衆を見て、年齢層や雰囲気に合わせてアドリブで興味を持って貰えるような話の展開が出来るのだろうが、自分にはそういった才能はない。であれば、出来る範囲で万全の準備をして臨むようにする。そうすれば、ベストの講演にはならなくても、失敗はしない。」

それがその会長の持論だそうです。

前述の大学の先生も、準備を丁寧に重ねてこられたことが伺えます。
講演で用意されている詳細な資料の数々はもちろん、インタビューでも、彼の話には正確なデータの裏付けがあり、おかげでとても分かりやすいのです。
これも準備の賜物でしょう。

彼らが何故ここまで準備に力を入れるのかと言えば、それは何よりも「伝えたいこと」があるからでしょう。「伝えたいという強い思い」があるが、それを伝えるスキルが不足している。自らの力を知ったとき、強い信念が、彼らに準備へ力を注がせたです。

しっかりと準備をしてあれば、間違った方向へ行ってしまうことはないでしょう。
そして、話したいことを事前に原稿にまとめ、練習を重ねることで、自己矛盾や論理の飛躍に気付きやすくなります。
ときに、自分の論理展開と結論が結びつかないことに気付くこともあると言います。

また、話すべきことをうっかり飛ばしてしまったり、その場の思いつきで話を付け加えておかしな方向へ話がそれてしまうことを防ぐことができます。話をする前に練習をすることは、原稿を洗練するためにも良い習慣と言えます。

練習をするとき、もうひとつ心掛けておくべきことがあります。それは聞き手への心遣い。話が論理的に展開されても、早口過ぎたり、声が小さかったり、話に適度な間がなく、メモを取り辛かったりしては元も子もありません。

「伝えたい」とは、裏を返せば「聞いてもらいたい」ということ。聞いて貰うためには、話してからの配慮も必要です。何も、聞き手が感動するような話術を身に付けろという話ではありません。ただ、聞き手が困らない話し方をすることを心掛けるだけで良いのです。練習の際、可能であれば、誰かに聴衆役を頼むのも悪くはないでしょう。

ここまでを意識しながら練習重ねれば、話の流れが完璧に頭に入り、僧侶が経をスラスラ唱えられるように、どんなに口下手であっても、少なからずスムーズに話せるようになっていることでしょう。

分かりやすい話の条件、それは
・「伝えたい」という強い思い
・事前準備(原稿作成~練習)
・話し手が詰まることなくスムーズに話せていること
ではないでしょうか。

いかがでしょうか。繰り返しになりますが、これは、「相手に理解してもらえる」話し方を説く書籍や研修を否定するものではありません。

ただ、それだけに頼っていては危ないかもしれないというお話です。上記を踏まえて頂いた上で、テクニックを身に付けられれば、鬼に金棒といっても良いでしょう。

最後に、世界4大テノール歌手に数えられるプラシド・ドミンゴ氏が受けた、谷村新司氏からのインタビューでのやりとりをご紹介します。

谷村「あなたの成功の秘訣はなんですか。」
ドミンゴ「信念と情熱、そして充分な準備です。」

信念・情熱と準備。
様々なことに通用する成功の秘訣のようです。

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